黒の剣

 18禁も作っているフォレスト製作の一般向けRPGです。

 主人公のカイエスは修業中の剣士であり、ただひたすら剣を磨くために生きています。もう一人の主人公であるシノブは、「黒の剣」を勇者に託す使命を持って旅をする少女です。この二人が出会い、そしてシノブはカイエスを勇者と見込み・・・というとあまりにもありきたりな感じがします。

 確かに物語は悪い龍が蘇るからそれを勇者様が退治する、というお馴染みのものなのですが、この「黒の剣」は通り一遍の勇者ものとは言えません。

 カイエスが救うべき人々は何代か前にこの大陸に侵略を行って先住民を虐殺して住み着いた騎士団の子孫です。王族は龍が蘇りそうになると民衆を見捨て、ありったけの財宝をかき集めて船で脱出しようとします。一般民衆は隠れ住む先住民を軽蔑し、先住民は虐待された恨みを忘れてはいません。

 この苦みばしったどこか重く暗い世界観がこの作品の特徴と言えるでしょう。同時に一般受けしない原因とも言えます。

 戦闘シーンは実にかっこいいです。大きなキャラクターが派手に動く動く。いやあ、この戦闘シーンを見るためにこのゲームをしてもいいくらいです。今ではそれほど珍しくないかもしれませんが、PC98でしたからねー。あの頃のマシンでこれだけ派手に動くのは感動ものでした。

 なによりも素晴らしいのはその物悲しいストーリー展開でしょうか。普通コンシューマーゲームなどでは善人は比較的助かりやすく、悪人はもちろんあの世行きなのですが、『黒の剣』においては龍の目覚めの波動で村一つが全滅したり、民衆を捨てて逃げることを恥じていたお姫様が他の王族とともに溺れ死んだりします。別に演出の都合上死んでいるわけではなく、恐るべき存在が目覚めた結果、当然死ぬべき人たちが死んでいきます。

 このような背景がプレイヤーをのめり込ませます。『黒の剣』はどちらかというと地味なゲームです。絵はさすがにその手のメーカーだけに奇麗ですが、特に派手な演出、技術を使っているわけではありません。あくまでも基本に忠実に、隙のない作りをしている良作です。

 PS版も出ているようなので、見つけられたら入手しておかれる事をおすすめします。と言うか私が入手せねば。

人の山田様が見てる

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