ブラックマジック M-66

紹介・レビュー

 今ではすっかり有名になりましたが以前は知る人ぞ知る、という感じだった士郎正宗さんのメジャー第一作、『ブラックマジック』の中の一編が原作となっています。

 テュフォンや夜叉姫などはまったく出てきませんで、オリジナルキャラクターであるジャーナリストのシーベルが主役となっています。ちなみに士郎正宗作品の象徴的人物であるマシュー博士はきっちり登場します。そういえばアップルシード(漫画版)の方ではシーベルがちょっとだけ出てきたりします。三巻、多脚砲台のあたりで。

 士郎正宗作品は今まで本作、アップルシード、攻殻機動隊とアニメ化されていますが、一番士郎正宗らしい雰囲気を持っているのが本作です。特殊部隊の独特の動き方は実に良く描写されていますし、全体に漂うマニアックな雰囲気も士郎正宗的です。何よりM-66の動きが実に物理的で面白いです。『ロボット=重量が相当ある』と言う所から来る重さの表現や動きの制約などもしっかりと描かれていたと感じます。

 ストーリーは元となった漫画版よりもかなり簡略化…というか全く別物となっています。元ストーリーは金星での権力争いがベースになっています。その過程でロボット兵器が脱走し、それを防ぐためにマシューのM-77が出動、2体のM-66を始末するも77も制御不能になり、大尉以下の特殊部隊がこれを制圧するまでという話でした。

 こちらはそう言うものはまったく関係なく、軍の秘密兵器が流出してテストプログラムにしたがって博士の孫娘(フェリス)を狙い、その情報を知ったシーベルが取材中にフェリスを助けるために奮闘する事になる、という話ですからまあ別の話と言ってもいいと思います。しかしこのストーリーの変更は妥当かつ適切なものであり、ストーリーそのものも単純な流れながら充分に楽しめるものでした。

 スタッフ・声優はかなり豪華なのですが、もう一人の主役であるフェリス役は何とこの作品がデビュー作であった横山智佐。なんだかアマゾンのレビューでも大根大根とえらい言われようです。今ではロリ声俳優として確固たる地位を築いておりますが。

 色々と不足もある作品ですが、二度か三度観なおしたくらいでかなり見ごたえのある作品でもあります。士郎正宗に興味のある方は攻殻よりもまずこちらを観ましょう。

人の山田様が見てる

凉武装商隊 since 1998/5/19 (counter set:2004/4/18)